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訪問看護師・訪問介護員の業務委託は違法?

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画像:訪問看護等のイメージ

どうも一部の事業者とは思いますが、訪問看護師を労働者ではない業務受託者に対応させているケース、訪問介護員(ホームヘルパー)を労働者ではない業務受託者に対応させているケースがあるようです。

これについて、法律上は合法か違法なのか、その他の問題はないのか、この頁でお伝えしたいと思います。

画像:注目のイメージ

本頁の記事内容へのご質問やご相談は、こちら(記事内容に関するご相談等について)をご覧ください。



「業務委託」と聞いて具体的には分からないという人もいるでしょうから、簡単に労働契約との対比で説明しておきます。

業務委託とは、企業が自社の業務の一部を、社外の企業や個人に委託する契約関係の総称をいいます。

業務委託契約と労働契約は似て非なるもので、両者の法的性質は当然として異なるものです。

労働契約では、労働者に対して業務遂行や時間等を具体的に指示すること(指揮命令権)ができますが、業務委託契約では、委託者から受託者への指揮命令権はありませんから、受託者は自身の裁量で業務を進めることになります。

業務委託契約の受託者は、法人でも個人でも委託者とは別の事業者になりますから、労働法の適用はなく(労働法の制限もなければ、労働法の保護もない。)、税金や社会保険も事業者としての扱いとなります。

その他、業務委託に関しては、こちら(業務委託は労働者の代わりになる?)に詳しく記載しております。

訪問看護事業を行うには、都道府県知事等から指定訪問看護事業者の指定を受ける必要がありますが、その運営にあたっては、指定を受けた事業者の自らの労働者によって看護サービスを行う必要があるため、これを業務受託者である別事業者に行わせることは、勝手に無指定の事業者に再委託していることになります。

指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準について(保発0305第4号)
 同条第2項は、指定訪問看護事業者は、その雇用する看護師等によって指定訪問看護を提供するべきものであることを規定したものであり、例えば、第三者への委託等を行うことは認められないものであること。

(行政通達より一部抜粋(第三の4の(16)の②)(参考リンク))

訪問介護事業を行うには、都道府県知事等から指定訪問介護事業者の指定を受ける必要がありますが、その運営にあたっては、指定を受けた事業者の自らの労働者によって介護サービスを行う必要があるため、これを業務受託者である別事業者に行わせることは、勝手に無指定の事業者に再委託していることになります。

訪問介護労働者の法定労働条件の確保について(基発第0827001号)
 なお、介護保険法に基づく訪問介護の業務に従事する訪問介護員等については、一般的には使用者の指揮監督の下にあること等から、労働基準法(以下「法」という。)第9条の労働者に該当するものと考えられること。

(行政通達より一部抜粋(1の(1)の後段)(参考リンク))

業務受託者の立場でみますと、訪問看護も訪問介護も無指定でありながら、指定事業者の下請けとして違法な収入を得ている形となります。

訪問看護賠償責任保険と訪問介護賠償責任保険というものがありますが、前者は事業者に加入義務があり後者は事業者の任意加入となっています。

こういった保険は事業者の業務遂行上のリスク回避のためのものであるわけですが、訪問看護や訪問介護の適法な事業運営から外れる部分については、保険給付の対象外とされるでしょう。

特に利用者を死なせてしまうような事故が発生した場合は、多額の損害賠償額が考えられますので、もしこれが業務委託関係から事故に繋がった場合は、保険者からの保険金が支払われず、業務委託者と業務受託者の双方の自腹で賠償額を支払うことにもなりかねません。



民法90条で「公の秩序又は善良な風俗に反する法律行為は、無効とする。」と定められています。

ものすごく分かりやすい例えでいいますと、「殺し屋との殺人代行契約は無効だよ。」ということです。

この「無効とする」とは、最初から有効な契約が成立していないことを意味しますので、先の例でいうと、殺し屋が任務を達成して報酬を請求してきたとしても、依頼者は無効を理由に報酬の支払いを拒むことができます。

これを訪問看護や訪問介護の業務委託関係に当てはめると、利用者としては指定事業に則った訪問サービスが提供されていないので、今まで支払った料金を全額返還せよということが考えられます。

さらに、保険請求で得た看護報酬や介護報酬も、そもそも無効だったのだから支払うべきではなかったとなるでしょう。

このようなことは、事業者の不正が明るみにでて、家宅捜索や指定取消等のニュースが報じられるようになり、これに便乗して利用者や関係者からの集団訴訟に発展していくことが考えられます。

本来は雇用関係にしなくてはならないのに、業務委託関係として扱っている場合は、以下のような労働関係法令による義務・責任が履行されていない可能性があります。

  • 業務時間が増えても受託者の報酬額が増えない。 ⇔ 労働者なら勤務時間に応じた賃金や割増賃金が必要です。
  • 急に業務がなくなった場合の受託者への補償がない。 ⇔ 労働者なら休業手当(最低でも平均賃金の60%)が必要です。
  • 業務に起因する病気・ケガに対する受託者への補償がない。 ⇔ 労働者なら労災保険の補償が受けられます。
  • 受託者なので健康保険・厚生年金・雇用保険に入れない。 ⇔ 労働者なら要件を満たす限り加入できます。
  • 受託者なので給与所得者としての年末調整等の税務手続きをしない。 ⇔ 労働者なら使用者に税務手続きの義務が発生します。

労働者かのような契約関係なのに、労働者としての権利が無視されているような事案は、この「労働者性(労働者たる性質があるのか否か)」をめぐって裁判等に発展する可能性もあります。

その他、こちら(業務委託は労働者の代わりになる?)にも詳しく記載しております。

前項まで主に業務委託者の目線で説明してきましたが、業務受託者の法律違反や法的リスクということで、以下にまとめます。

  • 無指定で訪問看護や訪問介護の事業を行ったという法律違反
  • 事業者として利用者に対する賠償責任の義務を負うというリスク
  • 今まで得てきた収入を返還することになるかもしれない虞がある

業務受託者が違法と知りながら、事業者と結託して業務委託関係で行ってきたのであれば救いようはないですが、特に個人の業務受託者の場合は、事業者から業務委託と労働契約で騙されているような場合もあります。

もし騙されて契約していたということであれば、事業者の指定権者である行政の担当課や弁護士に相談することをおすすめします。

どちらかというと被害者的な側なのに、法律違反の罪を着せられては不憫だと思います。

画像:注目のイメージ

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