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社会保険労務士の紹介・比較・一括見積りサイト等(以下、「ビジネスマッチングサイト」と表記します。)を利用しようとされている方は、この本文をみてから利用するか否かを判断されることをお勧めします。
内情を知らないままで利用すると、不利益を被ったり、トラブルとなることも考えられます。 |
ビジネスマッチングサイトとは
依頼者として、インターネットで社会保険労務士を探す場合は、たいていの人がグーグルやヤフー等の検索エンジンから「○○県 社会保険労務士」や「○○市 社労士」などと入力して検索されるかと思います。
そして、その検索結果として、個々の社会保険労務士事務所のHPの他にも、「社会保険労務士を紹介できるというサイト」「複数の社会保険労務士を比較できるサイト」「複数の社会保険労務士からの見積りがとれるというサイト」なども表示されたりします。
「紹介」と謳っていればイメージもしやすいですが、「比較や見積りができる。」と謳っている場合も、そのサイトにマッチング機能が備えられていて、ビジネスマッチングサイトとして運営されているものもあります。
依頼者からすれば、こういったサイトを利用したほうが、手っ取り早く事業者を探すことができたり、しかも無料で利用できるとなると、利用したくなる気持ちにもなると思います。
しかし、このようなサイトの運営の内情をよく知らないままで利用してしまうと、後で
思わぬ不利益を被る可能性があります。
利用者は無料だけど…
ビジネスマッチングサイトについて、依頼者となる利用者には「利用料も紹介料も無料です。」と記載されていることが多いですが、そのかわり事業者にはサイト運営者に支払う料金がかかってきます。
事業者がサイト運営者に支払う料金は、個々のビジネスマッチングサイトの料金規約にもよりますが、以下のような料金設定がされていることが多いようです。
●事業者が依頼者から受ける1年間の売上見込額の30~50%の成約料
●数万円の月額固定料金(事業者への紹介案件がなくても必ず発生)
●事業者から利用者にコンタクト(案件に対する応募、見積りの送信、サイト内メールやチャットの利用)する度に発生する数千円の手数料
これをみると分かるとおり、事業者には高額なコストがかかってきます。
利用者からすれば、事業者にどの程度のコストがかかっているかは関係ないように思われるかと思いますが、事業者が依頼者に設定する
価格に転嫁(価格にプラス)される可能性があります。
価格に転嫁されない場合でも、
基本料金とは別のオプション料金に細かく区分したり、
サービスや投下時間の引き下げ等で調整されることも考えられます。
一般的に価格というものは、最終取引までの間の中間業者の数によって、高くなる傾向があります。
サイト運営者の責任は
ビジネスマッチングサイトの運営者の多くは、利用者と事業者との間にトラブルが起きても、
一切の責任は負わないとしています。
また、このような場合に運営者に電話で問い合わせをしようとしても、運営者の電話番号が一切表示されていないこともあります。
利用者と事業者とのトラブルですから、運営者が何でもかんでも責任を負うべきものではないですが、運営者がどの程度、トラブル対応に積極的かどうかは、事前に確認しておいたほうがよろしいかと思います。
登録事業者以外も掲載されていることも
ビジネスマッチングサイトの宣伝効果・ステータスとなり得るのは、そのサイトに登録している事業者を多く抱えているかです。
登録事業者が少ないと、そのサイトの利用者も減るからです。
ビジネスマッチングサイトによっては、一見すると多くの事業者が掲載されているサイトもありますが、それが全て登録事業者とは限りません。
そのビジネスマッチングサイトと全く関係のない事業者も、いつの間にか勝手に掲載されていることがあります。
さすがに真っ赤な嘘はいけませんから、その地域の事業者(主に自社HPのある事業者)を表示しているだけということで、よく見れば登録事業者ではない旨の表記があったりはしますが、パッと見では分かりにくかったりします。
悪い見方をすれば、サイト運営者の卑しい意図で、多くの登録事業者がいるようにみせかけているようにもみえます。
ここで利用者が気を付けるべきところは、非登録事業者なのに登録事業者と思い込んで、一括紹介・見積り依頼をサイトからして、その非登録事業者からの応当がなかったので、その非登録事業者には
依頼ができないと勘違いしてしまうことです。
非登録事業者ですから、サイトから応当がないのは当然ですが、その非登録事業者が利用者の本命だった場合は、利用者にとっても
契約の機会を逃すという不利益を被ることになります。
社労士の登録事業者は少ない
実際にビジネスマッチングサイトに事業者として
登録している社会保険労務士は非常に少ないです。
理由は、社会保険労務士法第23条の2(非社会保険労務士との提携の禁止)によって、非社会保険労務士からの業務のあっせんが禁止されているからです。
茨城県社会保険労務士会のサイトにも以下のとおり、Q&A方式で記載されています。
Q:他士業の事務所やコンサル会社、サービス会社等が広告、宣伝や営業活動等を行って社労士に業務を依頼したい人を集め、社労士を紹介するような営業代行業務を行うことについては、問題がありますか?
A:ご質問のような場合、社労士業務の契約そのものは利用者と社労士が直接締結しているとしても、実質的にサービス会社等が顧客から社労士業務を受託し、その業務を社労士に再委託する形となると思われます。社労士が業務を行って得た報酬の一部が営業代行を行う事業所に入ることや、表面的にはそのようなお金の動きがなくても紹介元が何らかの利益を得ていることも考えられます。
たまたま社労士の知人や取引先等から顧客を紹介されるようなケースとは異なり、社労士又は社労士に似た名称を使うなどして顧客を集め、社労士と顧客との間に立って契約の便宜を図ることにより利益を得るような行為は社会保険労務士法により禁止されています。営業代行サービス会社等が営業活動をするにあたって、口頭、書面等で実際に業務を行う社労士や社労士法人の名義を使用することも社会保険労務士法違反となります。
社労士業務に関して社労士以外の事業所が介入するような事業活動は問題となることが多く、注意が必要です。不審な点がありましたら、社会保険労務士会又は連合会までお問い合わせください。
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なぜ、非社会保険労務士からの業務のあっせんを禁止しているかというと、依頼人と社会保険労務士との間に民間の営利を目的とした業者が入り込むことで、
法務業たる社会保険労務士の健全な業務運営が損なわれる虞があるからです。
社労士の方、他士業の方、他の業界の事業者の方へ
ビジネスマッチングサイトを運営するIT系の会社というのは、情報通信分野においての技術力という力を有しています。
そのような力を持つ者が、他の業界の商取引に強く介入し、強い影響力を持つようになれば、その業界の商取引のバランスを崩し、その業界が廃れていく可能性も考えられます。
そこで、本頁のテーマに共感を持たれた社労士の方、社労士以外の他士業の方、士業ではない他の業界の事業者の方に
提案なのですが、事業者側のほうから声をあげていきませんか。
ビジネスマッチングサイトの運営者側から利用者に対しては、メリットばかりが強調されてデメリットが伝わらない傾向があるため、こちら(事業者側)から利用者に対して、どのようなデメリットがあるかを伝えていくのです。
共感できる事業者の方は、本頁に記載しているタイトルや本文を、そのままコピーしても、コピーして文字や文章を適宜置き換えて、事業者ご自身のHPやSNS等に貼り付けて
使用してもらってかまいません。
こうやって少しでも注意喚起文が増えていくことで、各々の業界の商取引バランスを崩さないための抑止効果となっていくかと思います。