
社会保険労務士 暁事務所では、社会保険制度の専門家として、労災保険のご相談~申請手続き代行のサポートを行っております。
業務中にケガをしたという典型的な労災事故ではなく、業務が災いして症状として出たような場合で、なかなか労災認定されにくいという事例のトップ3を掲げるとするなら、「パワハラ等を原因とする精神疾患」「慢性的な腰痛や腱鞘炎」「脳・心臓疾患」がくるかなと思います。
この頁では、これらの事例について、なぜ労災認定がされにくいのかという点について、いくつか解説しておきたいと思います。

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パワハラ等を原因とする精神疾患
精神疾患による労災請求件数は年々増加していますが、依然として認定されるにはハードルの高い分野であるといえます。
労災と認められる要素としては、発病前の概ね6ヶ月間に、客観的に見て強い心理的負荷(パワハラ等のハラスメント、月100時間以上の時間外労働など)があったかどうかです。
パワハラの場合を例にしますと、誰の目から見てもパワハラであると感じるようなものであり、多数の人が精神疾患となってもおかしくないだろうというようなものでないと、認定されるのは難しいでしょう。
認定されない主なパターンとしては、以下のような例が掲げられます。
- パワハラや嫌がらせを受けていたが、日記、電子メール、録音などの客観的な証拠が残っていない
- もともと被害妄想が強く、他の人に比べてメンタルも弱い
- タイムカード等の記録がなく、過重労働(長時間残業)を証明できない
- 離婚・借金・身内の不幸など、プライベート(業務外)の心理的負荷も原因としてある
慢性的な腰痛や腱鞘炎
業務中に「グキッ」となった場合(急性腰痛)は比較的認められやすいですが、じわじわと痛むを感じるようになった慢性的な腰痛だと、非常に不認定になりやすい傾向があります。
腰痛は、日常生活の姿勢・加齢(経年変化)・個人の骨格など、「業務以外の要因」でも発生することがあるため、どこからが業務の影響なのかを分けるのが難しいからです。
腰痛以外では、腱鞘炎も似たような傾向があるため、これも難しいといえます。
労働している以上は、ある程度は疲れるものですから、よほど特殊な負荷がかかった等の証明ができないと、認定されるのは難しいでしょう。
認定されない主なパターンとしては、以下のような例が掲げられます。
- 「数ヶ月前からなんとなく腰が痛い」というような、明確な災害エピソード(引き金となった突発的な出来事)がない
- 医師の診断書に「加齢による変形性腰椎症」など、個人の骨格や経年変化に起因する病名が記載されている
- 重量物を頻繁に取り扱う、あるいは不自然な姿勢を長時間続けるといった、国が定める労災認定基準を満たしていない
脳・心臓疾患(過労死・脳梗塞など)
仕事中に脳梗塞や心筋梗塞で倒れたとしても、それだけで自動的に労災になるわけではありません。
これらの疾患は、もともと本人が持っている「高血圧」「糖尿病」「脂質異常症」などの持病(基礎疾患)が、日常生活の中で自然に悪化した結果として発症することがあるからです。
認定されない主なパターンとしては、以下のような例が掲げられます。
- 発症前1ヶ月間に100時間または発症前2~6ヶ月間に月平均80時間を超えるような時間外労働(いわゆる過労死ライン)はない
- 発症直前に、誰もが極度の緊張や恐怖を感じるような「異常な出来事(突発的な事故や激しいトラブル)」が発生したとは認められない
- 本人の不摂生や持病の管理不足による影響の方が、業務負荷よりも強いと医学的に判断される
まとめ
前項まで説明した、これら3つに共通するのは、「目に見える一過性の突発的な事故」ではないという点です。
かといって全く業務の影響がないとも言いきれないので、労災であると疑わしき事例とは言えるかと思います。
刑事裁判では「疑わしきは罰せず」で有罪としないと判断されますが、労災給付では「疑わしきは給付しない」と判断されます。
つまり、疑わしい状況のままでは国のお金は使えない、はっきりとした根拠がないと1人の人間に国のお金は使えないということなのです。

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