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おそらく雇用調整助成金を除けば、最も不正受給が多いのが、このキャリアアップ助成金ではないかと思います。
ここでは、実際にあった不正受給例を示しながら、不正行為になりがちなポイントをお伝えしたいと思います。
まず、キャリアアップ助成金とは、正社員以外の非正規労働者のキャリアアップ&処遇改善を目的とした雇用関係助成金の1つです。
国の助成金制度ですから、当然として国の経済対策としての目的があるわけですが、この助成金が意図するところは、国内の非正規労働者を減らしたい、正規雇用の機会を増大させる、賃金等の待遇面を改善するというところにあります。
要は国内の労働者が、低賃金の非正規労働者ばっかりになってしまうと、貧民国となってしまい、国内の消費が減る、失業者増加に繋がり社会保障費の増大、低所得者増加による生活保護費の増大などが問題となり、経済危機に陥る可能性がでてきます。
よって、このようなことを避け、日本国の国力増大に繋げることが、政府の思惑であるというわけなのです。
このことは、法律のルールである「無期転換ルール」「有期労働契約による解雇権濫用法理の類推適用」「同一労働同一賃金」をみても、その背景が伝わります。
※無期転換ルールとは、有期労働契約で通算して5年超えの更新に至った場合、労働者からの申込みがあれば無期転換にしないといけないというものです。
※有期労働契約による解雇権濫用法理の類推適用とは、客観的な合理性を欠き、社会通念上の相当性を欠く雇止めは認められず、従前と同一の労働条件で更新されることをいいます。
※同一労働同一賃金とは、正規労働者と非正規労働者との不合理な待遇差の解消を図るためのルールです。
※助成金の具体的な要件は、年度ごとに若干の変更があったり、経済情勢によっては大きく変わることもありますので、本頁の情報のみを鵜呑みにせず、必ず国等から発出された要領を確認してください。
キャリアアップ助成金には、いくつかのコースがありますが、最も利用されているのが「正社員化コース」です。
これは名称のイメージどおり、非正規労働者を正社員(正規労働者)として転換する企業に対して、助成金を支給する制度です。
助成金に詳しくない人がみたら、「正社員にするだけで国からお金がもらえるの?」と思う人もいますが、安直にこれだけでお金がもらえるということはありません。
助成金共通要件の労働法令の遵守ができている企業であることはもちろんのこと、事前の計画も必要ですし、どのような要件の非正規労働者が、どの程度の要件を満たす正規労働者に転換するのかなど、助成金の要件として細かく設定されていますので、これらを正しく読み取らないと不正受給となる虞もあります。
ということで、このキャリアアップ助成金(正社員化コース)ですが、助成金勧誘業者のDMやFAX、ネットの広告などで、「正社員にすれば○万円」のような助成金の要件を大きく端折った文言が売出文句にされることが多く、これが原因で不正受給に繋がっている現実があります。
以下、この頁では、キャリアアップ助成金の正社員化コースに焦点をあてて、不正行為となりがちなパターンについて解説します。
まずは契約社員として雇用して、その時点から正社員にすることを確約しているパターンです。
最初から労働者に「正社員にするから」と約束しておかないと、途中で辞められるかもしれないとの理由で、このようなことを行ってしまいがちですが、助成金の要件をよく理解しておいてください。
次項以降で解説するパターンもそうですが、建前としては正社員化というキャリアアップを掲げておきながら、結局のところは偽装したキャリアアップということが問題となるわけです。
ハローワークに正社員としての求人として掲げているにもかかわらず、契約社員としての雇用契約にしてしまうパターンです。
労働者からすれば正社員として雇用されていると思ってきたのに、しばらくして助成金の申請時期頃になって、後から会社から契約社員であったことを告げられたり、契約社員だったということにしてくれと言われることが考えられます。
最初から契約社員としての求人を掲げておけば問題はないわけですが、契約社員の求人って正社員の求人と比べて人気がありませんし、地方だとさらに人気のない求人になりますから、このようなルートを画策するわけです。
従来からいる正社員を契約社員だったということにするパターンです。
助成金の要件を満たせるように、過去の労働関係の帳簿書類も変造することも考えられます。
このようなことは、テクニックでも何でもなく、積極的な犯罪行為となりますので、やらないようにしてください。
正社員化の際に賃金を一定額アップさせるのが要件となっているので、それに基づいて労働者の賃金アップをして助成金の申請をしたが、その後しばらくしてアップ前の賃金に戻したり、最初から労働者に一定期間だけ賃金アップして支払うと示し合わせているようなパターンです。
後者のパターンは積極的な不正行為といえますが、前者のパターンは経営状況が悪化したからしかたがなくということもあり得ますが、それならば役員や他の労働者も同じように賃金引下げ等がないとおかしいと思われるでしょう。
前項まで、いくつかの不正行為パターンを解説しましたが、ホントに助成金の要件に合致するキャリアアップが行われたのか、助成金の申請には労働者の証明書が必要となります。
このような証明というものは、証明者たる労働者が事実に基づいて記載する必要があるもので、労働者が嘘の証明をしたことによって、会社に助成金が支払われてしまうと、その労働者も会社と結託して不正受給に関与したと、責任を問われる可能性があります。
労働者の知識・経験を考えると、会社から協力してくれと誘導されるように説明されてしまうと、不正受給となる認識がないまま証明してしまう可能性も考えられます。
もし、労働者の人で「不正かも?」との疑いがある場合は、キャリアアップ助成金の行政の担当課に相談することをおすすめします。
都道府県ごとに助成金の担当窓口が異なることもありますが、各都道府県の労働局に電話するかHP等を確認してみると、担当窓口に行きつくことができるかと思います。
特に中小企業の場合は、労働者の活用として、契約期間の定めのある契約社員が有効に機能する場面というのは、あまりないのが実情かと思います。
短時間勤務のパートであれば、中小企業でも働いている人は多いので、パートからの正社員化も対象となる要件の場合は、申請の機会の可能性もあるといえますが、パートの場合はパートのまま働きたいという人が多いのも実情です。
よほど求職者や労働者から人気のある会社であれば、正社員としての内定がとれないからと、まずは契約社員やパートから入って正社員を目指すという考えの人もいますから、この助成金の活用場面は出てくるかと思います。
ただし、そのような会社でもないのに、無理やり就業規則に正社員転換の制度設計をして、助成金の要件に合うように会社経営を変えていっては、後の経営に支障をきたすことも考えられます。
何の助成金でもそうですが、その助成金がどのような経済効果を考えているものなのか、企業に何を求めているのかを、適切に掴んだ上で助成金の活用を検討しないと、無駄に余計なことをしてしまったり、ひいては不正受給にも繋がりかねません。
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