トップページ > 取扱業務 > 雇用に関する助成金の申請 > 助成金の詐欺・悪質業者に注意
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お金にまつわることは、常に詐欺や悪徳商法の問題がつきまといますが、助成金に関しても例外ではありません。
ここでは、助成金にまとわりつく悪質業者に騙されないように、当事務所のこれまでの実務上の経験や他の社会保険労務士の先生方からの情報などによって得た知識をもとに、お役に立てる情報を掲載しています。
※助成金と補助金は厳密には性質が異なるものですが、詐欺や悪徳商法の手口に関しては、共通することもあります。 |
助成金に関する詐欺業者の形態
よくある詐欺業者の形態としては、経営コンサルタントや教育研修事業を行う業者、ネット関連の業者が多いようです。
それ以外では、普段何らかの取引をしている業者で「実はコンサル事業もやっていまして…」ということで、近づいてくる業者もいます。
「経営コンサルタント」というと聞こえがいいですが、弁護士や医師のように名称独占の国家資格(社会保険労務士も名称独占の国家資格です。)ではありませんので、誰でも名乗ることができます。
それ以外では、公的機関を思わせるような団体名を使っている場合もありますが、労働局等の公的機関が助成金の勧誘を行うことは絶対にありません。
経営コンサルタントや公的機関を思わせる団体名であっても、名称のイメージだけで信用しないようにしてください。
あくまでも、雇用関係の助成金の申請代行についての正規の専門家は、国家資格者である社会保険労務士だけですので、それ以外の業者(弁護士は別)に任せると、詐欺や悪徳商法に巻き込まれる可能性が高くなります。
その他には、社会保険労務士と業務提携をしているといって、依頼人となる企業と社会保険労務士の間に入って不当な利益を得ようとする業者もいますので、これも注意が必要かと思います(詳しくは、
こちら(社労士から紹介料を得る紹介ビジネスは違法)をご覧ください。)。
ちなみに、補助金の申請に関わる国家資格者は、中小企業診断士や行政書士が掲げられます。
助成金が簡単にとれるような煽り広告に注意
簡単に助成金がとれるような広告には注意してください。
詐欺業者の営業文句やチラシ、ホームページ等には、以下のような文言が見受けられます。
1.雇用保険対象の労働者を1人以上雇っている。
2.労働保険料を滞納していない。
3.しばらく会社都合での解雇をしていない。
※上記に当てはまる場合は、助成金の対象となる可能性があります。 |
これは間違いではありませんが、これだけで受給要件に該当する助成金など存在しません。
あくまで、数ある助成金制度の共通要件の1部にしか過ぎませんので、これから助成金の受給に至るまでの道のりは程遠いです。
ちなみに、上記3の要件については、雇用調整助成金のように雇用維持を目的とした制度の場合は、この要件を満たしていなくても対象となることもあります。
詐欺業者としては、事業主に「自分の会社も助成金の対象になるんだな。」と思わせて、何らかの契約に導くのが狙いなのです。
実際に、このような広告をしているのは、社会保険労務士ではない業者ばかりで、社会保険労務士なら、助成金の目的や事業主に負担がかかる部分など、もう少し掘り下げて案内していると思います。
他には企業に対してではなく、失業保険や社会保険の給付金が増額するなどといった広告を掲げ、個人(主には退職労働者)を狙った悪徳商法もあります(詳しくは、
こちら(失業保険等が増えるという詐欺・悪徳商法に注意)をご覧ください。)。
補助金の場合は「制度を知らないがために、もらい忘れの補助金がある…」のような煽りが見受けられますが、そんなにポンポンと補助金が受けられる企業は一握りです。
詐欺業者の料金は割高になっている
詐欺業者の助成金サポート業務に対する料金は、非常に高額に設定されていることが多く、とても業務内容に見合っているとはいえないものです。
簡単にざっくりと説明しますと、社会保険労務士に助成金の申請代行を依頼した場合は、相談・助言、申請書類の作成、行政に対する手続き代行、スケジュール管理などの業務を行って、獲得できた助成金額の20%前後の成功報酬が中心で、着手金がある場合でも少額です。
それに対して、詐欺業者に助成金のサポート業務を依頼した場合は、相談・助言(中には得られそうな助成金を提案しただけでサポート終了の場合もあり)にあたる業務しか行わないのに、助成金の予定額の50%前後の前金制だったり、40~50万円の前金制だったりと非常に高額です。
つまり、社会保険労務士に依頼した場合は、獲得できた助成金額の80%前後が企業側に残ることになりますが、詐欺業者の場合は、助成金が獲得できたとしても、その半分程度しか残らなかったり、助成金が得られないにもかかわらず、40~50万円のコンサルティング費用をとられることになるわけです。
助成金は簡単にはとれない
助成金の制度は数十種類あり、それぞれの制度ごとに、細かい支給要件が定められています。
また、助成金を受けようとする企業が、労働法令違反をしていないことも前提となっています。
さらに、助成金の制度によっては、何らかの人事制度や雇用労働者に対しての義務が課せられます。
特に人事制度の導入が要件となっている場合なら、助成金を受けたから終わりと、その人事制度を勝手にやめることもできません。
社会保険労務士が助成金をすすめる場合なら、今後の企業経営に負担となる部分も含めて説明すると思いますが、詐欺業者はそんなのおかまいなしです。
その後の企業経営がどうなろうと知ったこっちゃありません。
詐欺業者は、助成金を得ることばかりを強調して、企業側のデメリットとなるような部分は触れないようにして、営業してくることが考えられます。
実は事業主の方が気が付かないうちに「助成金の支給要件に当てはまっていた…」「申請書類を書いて出したら助成金がもらえた…」なんて、棚から牡丹餅のような甘い話はないのです。
詐欺業者の見分け方
詐欺業者の見分け方としては、主に以下の点にご注意していただければよいかと思います。
1.社会保険労務士でもないのに助成金の申請ができるといっている。または申請の部分については、下請けの社会保険労務士に任せるといっている。
2.業者のパンフレットやホームページなどに「たいていの企業が助成金の対象となり得ること」「依頼者がするのは○○だけ」など、やたらと助成金が簡単にもらえそうなイメージの記載ばかりがされている。
3.助成金の詳しい受給要件や、企業側の義務や負担になる部分についての説明が、曖昧である。
4.業者に支払う報酬が前金制のみで成功報酬制ではない。または、成功報酬制ではあるが前金の額も高額である。
1については、社会保険労務士が法律上取り扱ってよいとされる雇用関係(厚生労働省関係)の助成金という意味ではなくて、経済産業省などの補助金も含んでの意味として使われているケースもありますので、そういう場合なら必ずしも該当しません。
また、業者の下請けの社会保険労務士なら違法となりますが、業者からの紹介(業者がこれによる金銭的な利益を受けない場合)で、直接その社会保険労務士と契約を結ぶ場合であれば、違法とはなりません。
4については、社会保険労務士でも着手金という形で、前金を受領することはあります。ただし、高額な金額ではなく、不当な依頼者によるひやかしや協力義務の不履行の防止策等としての受領に止まります。
詐欺業者の手口
詐欺の手口も日々進化しており、いろんな手口がありますが、よくあるものとしては、以下のものが掲げられます。
●助成金の不正受給となろうがおかまいなしで申請書まで作成し、企業側に提出させるもの。詐欺業者が関わった痕跡を残さないため、後は企業側の責任が残るだけ。
●上記に付随して、添付書類として必要な就業規則を作ってもらったが、助成金申請でみられる部分以外はテキトーにしか作っていない。
●高額な着手金を前金として受領して、実際に業務に着手せず、音信不通となりトンズラするもの。
●詐欺業者の商品やサービスとの抱き合わせ商法。助成金を活用することで詐欺業者の商品やサービスが実質割引されるように謳うもの。商品やサービスと全く関係のない助成金だったりもする。
●助成金をとらせるようなコンサル契約のように誤解させて、実はちょっとした情報商材(提案書やガイドブックなど)を割に合わない金額で契約させるもの。
●助成金コンサルタント業者の販売代理店となり、業者の提供する販売ツールの使用料や業務提携料等を月額数万円で契約(1~2年間のしばり条項があったりする)をしたが、なかなか業者の言う通りには営業成果が見込めず、業者への支払いだけが残る形となった。
上記で掲げた情報商材や販売代理店契約のように、詐欺罪で訴えられないように巧妙な手口で業者側に有利な契約に誘導する悪徳商法も存在します(詳しくは、
こちら(給付金関係や求人サイト等の悪徳商法(詐欺まがい)に注意)をご覧ください。)。
詐欺業者の手口(社会保険労務士に対して)
社会保険労務士である当事務所は、さすがに助成金がもらえます的な勧誘電話はありませんが、助成金コンサルタント会社から業務提携をしたいとの勧誘電話はあります。
試しに内容をちょっと聞いてみると、初月に登録料が必要であるとか、毎月の業務提携料が必要だとか、月額数万円で数年単位のしばり条項がある契約を求めてきます。
勧誘電話をしてくる業者のほとんどが、業務提携をお願いしたいと持ち掛けておきながら、業務提携先からも金銭をとろうとします。
「月にある程度の仕事の依頼はありますよ。」と都合のいいことをいってきますが、依頼がなければ丸々損することは目に見えていますし、そもそも社会保険労務士には非社会保険労務士(社会保険労務士でない者)からの業務のあっせん(知り合いの企業等からの金銭を目的としない厚意による紹介は別)は法律で禁じられていますので、必ずお断りしています。
仮に、社会保険労務士に金銭を要求しない場合であっても、業者側が調子のいいことばかりをいって勧誘してきた企業と後でトラブルになることも考えられますので、確実にクリーンな業者であると信用できない限りは、お断りする方針です。
今のところ、当事務所に勧誘電話や勧誘メールをしてきた業者で、クリーンな助成金コンサルタントだと思えた業者はいませんでしたし、ネットでその業者の評判を検索してみると、必ずクレーム問題になっている業者ばかりでした。
詐欺業者の手口(反社会勢力が関与しているパターン)
詐欺業者が反社会勢力そのものや、反社会勢力に繋がっている場合は、以下のような犯罪に巻き込まれることも考えられますから、絶対に興味本位で関わってはいけません。
●助成金や補助金の無料セミナーで勧誘して、個別相談会や同席しているサクラを利用して、高額なコンサルタント契約を結ばせるもの。契約をするまで逃げられないようにしている可能性もある。
●助成金や補助金のセミナーやアンケートなどから個人情報を入手するパターン。最悪な場合、入手された個人情報から、半グレ組織等の反社会勢力からターゲットにされる危険性もある。
●助成金や補助金を得るテクニックや裏技と称して、申請者を不正受給(犯罪)に関わらせ、受給額の半分以上を手数料として搾取するもの。さらに、犯罪に関わってしまった申請者の弱みに付け込み、その後の犯罪行為に利用されるケースもある。
依頼をするなら社会保険労務士へ
助成金の申請代行を依頼したいとお考えなら、妙なコンサルタント会社ではなく、まずは社会保険労務士に相談をしてください。
助成金制度のような法律を根拠とした申請手続きを代行できるのは、その法律分野の国家資格者だけと限られているからです。
社会保険労務士に依頼したほうが安全な理由としましては、社会保険労務士としての業務を行うためには、いくつかの制約を受けるからです。
まずは国家資格を取得するのはもちろんですが、各県の社会保険労務士会に入会し、全国社会保険労務士会連合会にも登録しなければなりません。
登録後は法律・会則・倫理規程等の規制を受けながら業務を行うことになります。
社会保険労務士が不法行為や不誠実な行為を行うと懲戒処分の対象にもなりますし、社会保険労務士に対する倫理研修も定期的に受講することが義務づけられています。
こうして、社会保険労務士が不法行為や不適正な業務運営をしないように、罰則付きで運営されているのです。
しかし、学校の教職員や警察官、弁護士や医師などの業界にも、たまに悪い人がいるように、残念ながら社会保険労務士の中にもそういった人がいることは否定できません。
もし、そのような社会保険労務士に出くわした場合は、上述したとおり、懲戒処分の対象となりますので、各県の社会保険労務士会に通報してください。
まとめ(助成金の悪質業者にひっかからないために)
以上、助成金の詐欺・悪徳商法について記載しましたが、悪質業者にひっかからないように、順を踏まえてまとめておきたいと思います。
1.まず、助成金業者が社会保険労務士(または弁護士)以外なら警戒する。
社会保険労務士でもないのに「助成金が受給できるようサポートします。」のような宣伝文句がある場合は、悪質業者の可能性が高いといえます。助成金の申請書類の作成や手続きの代行をしてほしいのであれば、この段階で避けたがよいでしょう。
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2.助成金業者が社会保険労務士(または弁護士)と提携して(または監修を受けて)やっているといっても警戒する。
社会保険労務士と直接契約する場合より、トータルで料金が割高となる可能性があります。そもそも助成金業者が間に入る意味がないこともあります。
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3.チラシやHPなどの宣伝文句と、契約書に記載されたサービス内容に、齟齬がないか確認する。
助成金申請の手続きを代行してくれると思っていたのに、後で契約書を見たら単なる情報提供程度だった、なんてことにならないように注意してください。勘違いで契約した場合でも、法的に契約解除が難しいこともあります。 |
4.助成金業者のサービス内容が、料金に見合ったものであるか考える。
社会保険労務士でない助成金業者でも、助成金に関する情報提供や情報商材の販売、セミナーの開催であれば、法的にも可能ですが、これらを受けただけで助成金が受給できるわけではありませんので、サービス内容と比較して料金に納得できるか考えてください。 |
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出版社:同友館(2024/12/17)
単行本:300ページ
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悪質業者に騙された場合の相談先
いろいろと本頁で助成金の詐欺・悪質業者についての注意点など、お伝えしてきましたが、それでも騙された・ひっかかってしまったという場合は、弁護士に相談するのが一番であるかと思います。
悪質業者との契約書や提供された商品・サービス等に、事実と異なることや矛盾している部分があれば、そこから解約・返金といったことが可能であるかもしれません。
しかし、巧妙な悪質業者になると、法的な隙がないように契約を取り付けている場合もありますので、このような場合は弁護士に相談しても無理なこともあります。
いずれにしても、問題解決が図れそうか否かは、法律の専門家に話を聞いてもらわないと分からない点もあります。
弁護士の無料相談というのもありますが、多くの場合は短時間で話を聞いて、大まかな道すじを示す程度の回答となる場合が多いかと思いますので、できれば有料相談で実際の契約書等にも目を通してもらい、その上で弁護士の回答を受けたほうが、例え問題解決が無理な事案であっても、それはそれで気持ちの上でもスッキリするのではないでしょうか。
関連リンク
失業保険等が増えるという詐欺・悪徳商法に注意/社会保険労務士 暁事務所
(社労士でないコンサルタント業者からの失業保険等に関する業務にご注意を。悪質業者の手口や不正受給について記載しています。)
給付金関係や求人サイト等の悪徳商法(詐欺まがい)に注意/社会保険労務士 暁事務所
(詐欺にはあたらない範囲での悪徳商法の性質の悪さ等について記載しています。)
助成金申請支援サービスにご注意ください!(PDF)/全国社会保険労務士会連合会
(社労士でない者の助成金申請支援サービスにご注意を。連合会のチラシです。)
助成金・補助金に関する誤解/社会保険労務士 暁事務所
(助成金・補助金に関して、制度そのものを誤解している人、コンサルタント会社からの誤解を与える表現等について記載しています。)
お願い!! |
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本頁(助成金の詐欺・悪質業者に注意)を見てということで、日本各地の方からのお電話やメールをいただくのですが、あくまでも本頁は悪質業者による詐欺被害等に遭わないように「注意喚起」となればとの思いで情報提供をしているに過ぎませんので、これに関するご相談は受け付けておりません。
なお、過去にお受けしたご相談について、比較的多かったものをQ&A形式でまとめておりますので、こちら(助成金・失業保険等の詐欺(悪徳商法)に関するQ&A)をご覧ください。 |