トップページ > 取扱業務 > 雇用に関する助成金の申請 > 雇用調整助成金について
|
とくに世界規模や日本全国で経済不況に陥るときに、国の経済政策としてニュース等で報じられることが多くなる雇用調整助成金ですが、これを受けるためには、助成金の受給要件を満たすことはもちろんですが、それ以外にも注意しておくべき点など、この頁で説明しておきたいと思います。 |
雇用調整助成金とは
国の雇用に関する助成金の1つとして以前から存在している制度で、この助成金の目的とするところは企業の雇用維持を図ることです。
経済状況の悪化により企業の売上が確保できなくなっても、労働者を解雇せずに休業させて休業手当(法律によって最低でも平均賃金の60%以上)を支給すれば、労働者の雇用と生活を守ることができ、企業にとっても経済状況が回復した後に再起を図るのが容易になります。
しかし、企業の売上も確保できない状況の中、労働者への休業手当の支払いが重荷になるのは否めません。
そこで、この休業手当の支払いを一定水準(場合によっては助成金額が上回ることもあります。)まで国が負担してくれる制度が、この雇用調整助成金というわけです。
また、そのときの経済状況によって、特例措置が設けられることもあれば、逆に厳しい制限が設けられることもあります。
申請件数の増加で懸念されること
この雇用調整助成金ですが、世界規模や日本全国でのレベルで、金融危機やウイルス問題などで景気が低迷するような場合は、日本政府も特例措置などを設けて、広く活用の道を開くのですが、それゆえに以下のような弊害もでてきます。
●申請件数が一気に増加するため、申請窓口となっている労働局やハローワークに相談の電話をしても繋がりにくくなる。
●社会保険労務士に申請を依頼したくても、その社会保険労務士が顧問企業の申請で追われるため、飛び込みでの依頼は受けてもらえなくなる。
●悪質なコンサルタント会社等によって、詐欺や悪徳商法の被害に遭う企業が増える。
労働法令違反のある企業は支給されない
雇用調整助成金について、あまりニュース等でも報じられない部分ですが、労働法令違反のある企業には支給されないことなどは取り上げられません。
政府関係者からすれば、法令違反がないことは「あたりまえ」のことだからです。
お国の政策ですから、法令違反のある企業に支援しないというのは、当然といえば当然のことなのですが、労働法令違反については、企業側がよく分からずに違反の状態になっている場合も少なからずあります。
助成金の支給申請時の添付書類として、賃金台帳や出勤簿等の提出を求められますが、このような帳簿書類に法令違反があると、労働局等の申請窓口は通してくれません。
よくある指摘事項としては、残業時間や残業代が正しく計算されていないことや、出勤簿等の記録が曖昧で労働時間が適正に把握されていない(所定労働時間や法定外の残業時間、出勤日や公休日などが、きちんと区分けされていない)ことなどです。
雇用調整助成金の支給申請の際には、すでに労働者に休業手当を支払った後ですから、このようなことで引っかかってしまうと、今後の企業経営に大きく支障をきたすのはいうまでもありません。
労働局等からの指摘を受けて、切羽詰まった状態で社会保険労務士に頼ってこられる方もいらっしゃいますが、ちょっとした誤りならともかく、根本的な労務管理の土台も構築できていないような状態なら、申請を諦めざるを得なくなってしまいます。
助成金の申請以前に準備しておくこと
前項でもいいましたが、助成金の申請を検討しているのであれば、事前に労働法令違反のない労務管理体制を整えておいてください。
そうしておかないと、助成金の申請と同時進行になってしまい、労働局等からの指摘事項により二転三転してしまい、そのたびに労働者に何らかの変更をお願いすることなどが生じてしまい、労働者に不信感を募らせトラブルに発展するケースも考えられます。
例えば、今度から残業代をきちんと計算して支払うという場合に、労働者の複数人から「今までの分も遡って支払え。」なんて言われてトラブルにでもなってしまうと、助成金の申請どころではなくなります。
今まで労働者も文句をいわなかったからと、労働法令もよく考えずに「ことなかれ経営」でやっていては、何か問題が起こってからでは、手遅れになることも考えておかなければなりません。
厚生労働省のサイトからダウンロードできる雇用調整助成金のガイドブック等を、一生懸命に読む方もいらっしゃるかと思いますが、その前段階で労働時間法制をよく理解しておかないと、読んだところで意味が分からないままになってしまいます。
雇用調整助成金の申請手続きは、法務の手続きであって、単に支給を受けるための応募書類の作成ではありませんので、その点、肝に銘じておきましょう。