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失業保険等が増えるという詐欺・悪徳商法に注意

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雇用保険や社会保険の制度は身近なものではありますが、一般の人にとっては分かっているようで分かっていない部分も多くあるかと思います。

それをいいことに、失業保険や社会保険の給付金が多くとれるなどと、詐欺や悪徳商法を働く業者もいるようです。

ここでは、そのような被害にあわないように、いくつか役に立つ情報を掲載しています。

本頁の記事内容へのご質問やご相談は、こちら(記事内容に関するご相談等について)をご覧ください。


「失業保険や社会保険の給付金が増える」という宣伝広告に注意

退職を考えている人向けに、失業保険や社会保険の給付金が増えるというネットの宣伝広告やサイトがありますが、詐欺や詐欺まがいな悪徳商法の可能性があります。

まず、このような宣伝を行っている業者は、プロの退職の専門家やコンサルタントなどと名乗っているようですが、あくまで自称専門家であって、社会保険労務士のように国が認めている専門家(国家資格者)ではありません。

社会保険制度による書類の作成や提出代行など、本人の代理人として報酬を得て業務として行うことができるのは、社会保険労務士法によって、開業登録をした社会保険労務士または社会保険労務士法人と定められています(弁護士は別)。

当然、自称専門家でしかない業者(以下、「自称専門業者」と記載します。)が、上記の社会保険労務士の業務を行えば違法行為となります。

失業保険(雇用保険)も社会保険も法律を根拠とした制度ですから、依頼人が思わぬ不利益を被らないよう、法制度の健全な運用の観点から、このような資格制度がとられているのです。

自称専門業者が社会保険労務士法に抵触しない範囲で業務を行うなら法律違反とはなりませんが、その実際としては、自称専門業者に対するクレームが絶えないようです。

自称専門業者が行うことができる業務の範囲としては、書類の作成や提出代行を除いた部分となりますので、主として相談・助言のみに限られます。

しかし、悪質な自称専門業者の場合は、儲かる・得する、やらないと損するのようなイメージをもたせ、一般の人には分かりづらい言葉のトリックで契約させるように誘導し、業務内容に見合わない法外な料金を請求することがあるようです。

自称専門家が詐欺業者とは限らないが…

「自称専門家」と聞くと、何かよくないイメージをする人も多いかと思いますが、別にこれそのものが「悪」というわけではありませんから、健全な営業を行っている業者もいるかと思います。

しかし、正規の国家資格者である専門家と比べれば、詐欺業者が紛れている可能性が高いのも否めません。

また、それでなくとも、顧客満足よりも顧客獲得や売上確保に執着してしまい、詐欺業者とまではいえないが、詐欺まがいな営業になってしまっている業者も見かけます。

どちらかというと、積極的な詐欺を働く業者よりも、詐欺まがいな業者のほうが多いような気がします。

詐欺と詐欺まがいの区別については、こちら(給付金関係や求人サイト等の悪徳商法(詐欺まがい)に注意)に詳しく記載しておりますので、併せてご覧いただければと思います。

自称専門家がしてくれること

結局のところ、自称専門家が何をしてくれるかというと、以下の2つのことが考えられます。

1.質問や相談を受け、助言すること

2.自称専門業者が作成した情報商材の提供

サポートを受ける効果としては、給付金の正しい知識を得ることができるため、本来もらえるはずの給付金(受給要件に該当する給付金)の申請忘れを防ぐことができることです。

間違っても、自称専門家が給付金申請窓口の行政機関に対し便宜を図り、本来もらえないはずの給付金(受給要件に該当しない給付金)がもらえることになったり、給付額が増えたりすることはありません。

これは、社会保険労務士や弁護士であっても同じことで、あくまで法律に則った申請手続きをして、行政機関の審査を経て、給付金の受給可否や受給額が決定されることになります。

自称専門業者の独特な表現に注意

自称専門業者の宣伝広告やサイト等に表示されている独特な言い回しの表現には気を付けておいてください。

「社会保険給付金」「退職給付金」「失業保険が最大で28ヶ月に…」などの表現がされていて、これに惑わされる人がいます。

社会保険の制度に理解がある人であれば、何となくこれはあれのことをいっているのかな?と思慮できる人もいるでしょうが、この分野の情報に弱い人にとっては誤った認識をしてしまうことも考えられます。

もちろん、業者の独特な表現であるため、例えば、全国健康保険協会に「社会保険給付金」や「退職給付金」とは何?と聞いても意味が通じなかったり、ハローワークに失業給付金(厳密には基本手当)が28ヶ月になると思って相談しても、行政等の窓口の職員が困惑して明確な回答が得られないのではないかと思います。

おそらく業者が意図しているのは、健康保険の傷病手当金(資格喪失後の継続給付)と雇用保険の失業給付金を足して、「失業保険(他には失業手当、社会保険給付金、退職給付金と表示している場合も)が最大で28ヶ月に…」などと表現しているのでしょう。

健康保険の傷病手当金は最長で18ヶ月、雇用保険の失業給付金は離職理由等によっては10ヶ月以上の給付日数になる人もいますから、一応の辻褄は合います。

しかし、そもそも健康保険と雇用保険の社会保険制度は別々のもので、それぞれに管轄の申請窓口も異なりますので、業者が勝手に2つの制度を足して28ヶ月分の給付金などと宣伝することは、多くの人に混乱を与えることになります。

業者の思惑は分かりませんが、筆者としては、多くの人に何か特別な情報やテクニック等を持っていると興味を引かせて、業者とのサポート契約等に導くのが狙いなのかなと感じてしまいます。

給付金の申請対象の曖昧な表現に注意

自称専門業者は、給付金の申請対象として「仕事などが原因で心身に疲れを感じている。」「社会保険と雇用保険に1年以上加入している。」「現在も在職中である。」などの3つの条件を掲げているようですが、これだけでは雇用保険の失業給付金の対象にはなっても、健康保険の傷病手当金の対象になるとは限りません。

健康保険の傷病手当金の対象となるためには、単に心身に疲れを感じているというだけではなく、病気やケガが原因で労務不能な状態(労務不能か否かは医師の証明書が必要です。)でなければなりません。

心身に疲れを感じているなんて、個々人の感情に左右されるものでもありますし、ましてや給付金の申請にあたっては、正確な受給要件が必要となりますので、このような曖昧な表現は避けてもらいたいものです。

もっとも、悪質な自称専門業者が相手となると、申込者が勝手に誤解して契約してくれるのを待っているわけですから、改めるようなことはしないと思いますが…

いずれにしても、このような業者との契約の際に、業者側が申込者の病状具合(労務不能な状態で医師の証明書がいること)をロクに確認もしないで契約に導くようなら、危険な業者と考えておいたほうがよいかもしれません。

給付成功率が100%、返金保証は信用できる?

自称専門業者の宣伝広告やサイト等に「サポート対象者の給付成功率が100%」との記載があっても、一旦、冷静になって考えてみましょう。

しっかりと読めば、「28ヶ月分の給付金」そのものの保証ではなく、退職後に受けられる給付金全般の成功率という意味で記載しているものと思われます。

業者のサポート対象の条件の中に「雇用保険に1年以上加入している。」とあれば、ほとんどの人が自己都合による退職でも、雇用保険の失業給付金の受給対象者にはなります。

ハローワークに行きさえすれば、失業給付金の受給手続きを失敗するということは、まず考えられません。

失業給付金の給付額や支給日数なども、退職者のもともとの受給要件で決まるものですから、自称専門家の介在によって左右されるものではありません。

他には、「給付金が受給できなければ全額返金」との記載があったりしますが、これも上述した内容と同じで「28ヶ月分の給付金」そのものが受給できなければの意味ではなく、退職後の何らかの給付金が受給できなければという意味であれば、実際に全額返金になる可能性は低いと思います。

また、業者のサポートを受ける人側の問題で給付金が受けられない場合(申込者の勘違いで契約した場合が考えられる。)は、「返金の対象外」と契約書に記載されていることも考えられますので、宣伝広告等の「返金保証」の文言で安易な気持ちで契約をしてしまうと危険です。

実際に給付金が28ヶ月以上受けられる人とは

悪質な自称専門家の口車にひっかからないように、実際に給付金(健康保険の傷病手当金+雇用保険の失業給付金)が28ヶ月以上受けられる人の例を記載しておきます。

※前提として、健康保険と雇用保険の加入期間等の要件は満たしているものとします。

以下、在職中の病気が原因で休職することになり、その後も長期間の療養生活と失業期間を過ごした人の例として、時系列に沿って記載します。

1.在職中に病気を患い、それが原因で労務不能な状態になったので、会社を休職することになり、健康保険の傷病手当金を受給することになった。

2.ずっと病気のまま復職の目途も立たないこともあって、会社からの勧奨を受けて退職することになる。

3.退職したとはいえ、病気療養のため就職活動もできないので、健康状態が回復した後の失業期間に備えるために、雇用保険の失業給付金の受給期間の延長手続きを行うことになる。

4.傷病手当金の受給開始から1年6ヶ月を経っても、労務不能な状態が続いたので、最長期間である1年6ヶ月分の傷病手当金を受給するに至る。

5.その後、ようやく健康状態も回復し再就職のための就職活動ができる状態になったので、雇用保険の失業給付金を受けることになる。

6.ハローワークに給付金の相談をしたら、会社からの退職勧奨による離職で、年齢は50歳で、雇用保険の加入期間が20年以上あったので、失業給付金の支給日数は330日になるとのことだった。

7.最初はできるだけ早くに再就職を決めてやろうと思っていたが、思うような結果がでないまま失業期間もそのまま続いたため、330日分の全ての失業給付金を受給するに至った。

8.現在も失業中であるが、給付金は全て受給したため、今後は貯金を切り崩しながらの生活となる。

このような結果、傷病手当金が1年6ヶ月分(18ヶ月分)、失業給付金が330日分(11ヶ月分)となり、トータルで29ヶ月分の給付金が受給できたことになります。

その他の注意点

前項までの注意事項の他に、以下の点にも注意しておいてください。

失業保険等のコンサルタント会社のHPに、社会保険労務士や弁護士が監修していると書いてあるが、本当に信用できる会社なのか。

失業保険等のコンサルタント会社に顧問弁護士がついている場合は、詐欺や悪徳商法の可能性はないのか。

公的機関っぽい名称のコンサルタント会社があるが、公的機関と何らかの関係があるのか。

コンサルタント、アドバイザー、インストラクター、コンシェルジュなどと名乗っている人がいますが、信用できますか。

詳しくは、こちら(助成金・失業保険等の詐欺(悪徳商法)に関するQ&A)をご覧ください。

給付金が増えても、いいこととは限らない

給付金が増えるといいことだと思う人もいるとは思いますが、健康保険の傷病手当金でも雇用保険の失業給付金にしても、これを受給している期間というのは、社会生活(職業生活)からリタイアしている状態です。

とくに若年世代の人は自己のキャリア形成への障害ともなりますし、若年世代でも中高年世代でも、リタイア期間が長くなるほど再就職先への印象も良くならないでしょう。

お金の面から考えると、仮に1ヶ月分の給付金をもらったとしても、その給付金の額は退職前の賃金月額のおおむね60%くらいになります。

さらに、国民健康保険、国民年金、住民税などの支払いもあり、給付金が支給される日数も限度があるため、リタイア期間が長くなるほど生活が困窮することになります。

生活の安定を得ないまま長期間を過ごすことは、人間にとって心身ともにすさんでいくことにもなりかねます。

そうなってしまうと、職場復帰も思うようにいかず、社会からはじかれてしまう危険性があることも忘れてはなりません。

不正受給は犯罪です

自称専門家からの情報や提案が、不正受給を促すものであれば絶対にしないでください。

その専門家が「国の給付金を利用するから安心」と言っていても、その給付金を得るために事実と異なる届出等を行うことは、国に対する詐欺罪となります。

どうしても社会保険制度の設計上、あと数日の在職で保険給付の要件を満たすか否かの際どい部分があったりと、知っているかどうかで保険給付に影響することはありますので、退職日をいつにするのか上手に計画して行動することは悪いことではないですが、以下に掲げることは不正受給にあたります。

雇用保険の失業給付金について、自己都合より解雇や退職勧奨によって辞めたほうが、支給期間が長くなる等の理由から(特定受給資格者となるため)、本当は自己都合での離職なのに、雇用主に離職票の退職理由を解雇等にしてもらう行為

健康保険の傷病手当金を不正に得る目的で、病気で労務不能であると偽って保険給付を受ける行為(鬱病等の精神疾患と偽る例が多い)

病気が治って就労が可能な状態になっているにもかかわらず、未だ病気で労務不能であると偽って保険給付を受け続ける行為(鬱病等の精神疾患の例が多い)

契約書へのサインは慎重に

どのような商品やサービスをいくらで売買するのかは、他に法律上の決まりや公の秩序に反するものでなければ、契約当事者が自由に決めることができます(民法上の「契約自由の原則」といいます。)。

一般的な商慣習では、売主が価格設定をして、買主がそのまま承諾をするか割引交渉を経るなどして、承諾をするという流れになります。

そして、契約書にサインをした以上は、以後その定めに拘束されることになります。

もし、相手方が契約で定めた履行義務を果たさない場合は、その契約内容を根拠に法的に履行を求めることができます。

法的には、錯誤(勘違い)・詐欺・強迫によって契約をした場合は、契約の無効や取消しを主張することができますが、それを明確に立証(証明)することができなければ、その主張が通ることは難しいです。

良心的な売主であれば、買主からの信頼や満足を気にしますので、買主の誤解による取引によって売主にいくらかの不利益が出たとしても、快く契約の取消しに応じてくれたり、損害の程度に応じた返金対応をしてくれたりということがあります。

しかし、最初から買主の誤解を狙って契約を誘導するような悪質業者が相手となると、きっちりと料金の請求を求めてきたり、すでに受領した料金の返金にも応じないでしょう。

まとめ(失業保険等の悪質業者にひっかからないために)

以上、失業保険等の詐欺・悪徳商法について記載してきましたが、悪質業者にひっかからないように、順を踏まえてまとめておきたいと思います。

1.自称専門業者が社会保険労務士(または弁護士)以外なら警戒する。

社会保険労務士であるならば、情報弱者(法的弱者)が不利益を被らないよう、社会保険制度の法的権利や義務を考えて動きますが、悪質な自称専門家であれば、情報弱者から大金をせしめようとします。

2.自称専門業者が社会保険労務士や弁護士の監修を受けてやっているといっても警戒する。

そもそも監修を受けているというのが嘘の可能性もありますし、どの程度まで監修を受けているのかも怪しい部分もあります。監修者の名称や所在地等の表示がない場合はなおさらですが、表示があったとしても警戒しておいて損はありません。

3.チラシやHPなどの主たる宣伝文句が「サポートを申し込めば失業保険等が増える。」かのようなイメージをもたせるものになっている。

雇用保険や健康保険の給付金が増えるような人は、会社都合で退職した人、病気等で就職が困難な人などに限られます。普通の人なら「給付金が増えるから病気しよう。」なんて考えませんよね。

4.失業保険のことなら、自称専門家のサポートを受けずとも、管轄のハローワークに行けば十分です。

初めて失業保険を受ける人、だいぶ昔に受けたきりで久しぶりに受ける人など、手続き等で不安に思う人もいるかと思いますが、管轄のハローワークに行けば、失業保険をもらい損ねることはないと思います。

5.病気等で休職している(または休職中にそのまま退職した)なら、自称専門家に聞かずとも、全国健康保険協会の地方支部が傷病手当金のことで教えてくれます。

申請手続きは失業保険に比べたら少しハードルがあがるかもしれません。一定の要件はありますが、病気等で休職中に退職した場合なら、退職後も労務不能の状態が続く限り、1年6ヶ月を限度に傷病手当金が継続して支給されます。

上記のとおり、自称専門家のサポートがなくても十分に退職後の給付金は得られますので、悪質業者に数万円以上にもなる報酬額を支払うのはもったいないと思います。

それよりも本でも買って知識をつけたほうが数千円で済みますし、妙な自称専門家から得られる情報と大差ないか、こちらのほうがより深い情報が得られることがあるかと思います。
病気・ケガが原因で休職や退職をせざるを得ない状態の方で、健康保険の傷病手当金の手続き等でお悩みなら、当事務所にご相談ください。


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なお、過去にお受けしたご相談について、比較的多かったものをQ&A形式でまとめておりますので、こちら(助成金・失業保険等の詐欺(悪徳商法)に関するQ&A)をご覧ください。




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