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職場のハラスメントについて、主な基礎知識を掲載しています。
人事労務経営のご参考にお役立てください。 |
ハラスメントの分類
ハラスメントとは、相手に迷惑をかけること、つまり嫌がらせのことをいいます。ハラスメントの中でも、特に職場で起こり得るものは、以下のものが掲げられます。
<セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)>
意に反する性的な言動や行為による嫌がらせのことをいいます。大きく分けると対価型と環境型に分類することができます。対価型は解雇や降格、減給など人事処遇に対する不利益を受けることです。環境型は就業環境が不快なものとなり、能力の発揮に悪影響が出るなどの支障が生じることです。
<パワー・ハラスメント(パワハラ)>
上司と部下、職場の先輩と後輩などの関係で、職権を背景に人格を侵害する言動を繰り返し行い、過度な精神的負荷を与え、就業環境を悪化させる行為をいいます。また、部下から上司への逆パワハラもあり、上司からありもしないパワハラを受けたとして、正当な業務命令に反発する部下もいます。
<マタニティ・ハラスメント(マタハラ)>
妊娠・出産・育児等を理由に、上司や同僚が、女性労働者に嫌がらせをしたり、就業に関して不利益な取り扱いをすることをいいます。ちなみに「マタニティ」とは日本語に訳すと「母性」という意味です。
<パタニティ・ハラスメント(パタハラ)>
積極的に育児等に関わる男性労働者に対して、上司や同僚が、嫌がらせや就業上の不利益な取り扱いを行うことをいいます。ちなみに「パタニティ」とは日本語に訳すと「父性」という意味です。
<モラル・ハラスメント(モラハラ)>
精神的な苦痛全般のことをいい、言葉や身ぶり、態度などによって、他人の人権や尊厳を侵害する精神的な暴力や虐待のことをいいます。
<その他、職場で起こり得るもの>
アルコール・ハラスメント、アカデミック・ハラスメント、職場でのいじめ行為などが考えられます。
使用者の法的義務
セクハラ、パワハラ、マタハラ、パタハラについては、使用者のハラスメント防止措置として「労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」と、以下の措置を講じることが義務となっています。
1.使用者の方針の明確化及びその周知と啓発
2.相談・苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
3.職場におけるハラスメントにかかわる事後の迅速かつ適切な対応
4.その他、上記1~3の措置に併せて実施すべき措置
上記以外のハラスメントについては、法律として明確に使用者に責任を求める義務付けがなく、法的な定義というものもありません。
しかし、労働者間の問題行動もそのまま放置し、使用者として誤った対応をとれば、労働契約法による安全配慮義務の観点から、使用者の管理監督責任が追及される可能性はあります。
労働者が働きやすい快適な職場環境を作るためにも、セクハラ等と同じような措置を講じておくべきでしょう。
※パワハラの防止措置については、中小企業は2022年4月からが義務となります。
ハラスメントの放置がもたらすもの
職場のハラスメントを放置することによって、就業環境が害されることはもちろんですが、その他に、経営者が気に入って採用した労働者や、教育訓練を施して手塩に育てた労働者が、上司や同僚との関係で退職に追い込まれることも考えられます。
また、部下や異性の労働者から、ハラスメントの加害者にされることを恐れて、適切に部下の育成や業務の指揮命令をできない上司も増える可能性もあります。
いずれにしても、企業内部で正しいハラスメントの理解を深めていくのと、どのような防止措置を施していくのかが、今後の企業経営の課題ではないでしょうか。
ハラスメントは犯罪ではない
ハラスメントは倫理的によくない行為ではありますが、犯罪ではありません。ただし、これがエスカレートして、殴る・蹴るなどの行為に至ってしまえば、傷害罪や暴行罪となり、刑事上の責任が問われるようになります。
ハラスメントの範囲であれば、刑事上の罰則を受けることはありませんが、被害者となる方が、過度に精神的被害を受けたとか、うつ病などの精神疾患を発症した、職を失ったなどで、治療のために時間や費用を失った、賃金を得られる機会を失ったなど、被害と実害の因果関係が証明できれば、民事上の損害賠償請求ができる可能性はあります。
さらに、精神疾患を発症したキッカケが、職場関係によるもの、労使関係によるものであれば、労災保険による療養補償や休業補償などを受けられる可能性もあります。
ただし、民事上の損害賠償請求にしても、労災補償のための労災認定にしても、ハラスメントの程度の問題や、被害と実害の因果関係の証明が困難であるなど、これらの請求が通るまでには、かなりのハードルがあります。
証明できるものがないということで、一生懸命に被害の状況を話す人もいますが、加害者とされる相手側が認めない限りは、裁判上の解決の他、社内解決も和解による解決も難しいので、音声の録音やノートの記録など、日々の証拠保全に努めておくことが大切です。